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 日本の減価償却慣行とIFRSへの移行

日本の減価償却慣行とIFRSへの移行

作成日:平成24年2月13日


IFRSでは税務上の減価償却費は認められないのか?

 減価償却は本来、各企業が独自の状況を勘案して自主的に決定すべきものです。

 しかし、日本の会計慣行では、法人税法に規定する普通償却限度額(以下、税務上の減価償却)が不合理と認められる事情がない限りは、税務上の減価償却を会計上妥当なものとして取り扱ってきました。

  • 固定資産に係る処理に会計上と税務上の差異が生じると別表で調整するのが煩雑であること
  • 税務上のメインの減価償却方法である定率法は、早期の償却費が大きく、税金計算が有利になること

 等が理由です。

 税務上の減価償却は、政策的な理由等で近年頻繁に改正されていますが、日本の公認会計士協会は税務上の減価償却が改正される度に、「減価償却の関する当面の監査上の取扱い」を改正し、税務上の減価償却の改正に合わせて会計上の減価償却を変更することを認めています。
 この結果、上場企業の会計でも、定率法だけで取得年度によって3つの方法が混在することになりました。

 しかし、IFRSでは、経済的便益の費消パターンを各企業が見積る必要があります。
 税務上の減価償却は、全ての企業に一律で適用してしまうため、各企業の独自の状況を反映することができません。

 IFRSでは、会計上の減価償却と税務上の減価償却に差が生じないこと自体がおかしい・・・。
 そんな風にも思えます。

 ところが一方で、IFRSには簡便規定もあります。
 その最たるものがIFRS初度適用の際の固定資産の「みなし原価」の規定です。

 IFRSを適用するにあたり、固定資産の簿価は、取得時に遡ってIFRSの減価償却を行い算定するのが原則です。
 しかし、「みなし原価」の規定では、その時点の公正価値をIFRS適用時の簿価とすることができます。
 公正価値というと算定が大変そうですが、「従来行ってきた減価償却による簿価」が「IFRSの減価償却による簿価」と「概ね同等」と認められれば、「従来行ってきた減価償却による簿価」を使用することが認められます。

 ここからは私見ですが、税務上の減価償却の規定も「材質」「構造」「用途」等の別に細かく定められているものです。
 減価償却はあくまで見積計算ですから、完璧な方法等はないものです。
 よって、実態と乖離していなければ、税務上の簿価をIFRSの簿価と「概ね同等」とすることは十分可能であると思います。
 また、日本の場合は税制改正により、同じ定率法でも取得年度によって3つの方法が生じてしまいましたが、 それを正当な理由による会計方針の変更として会計上も認めた理由は、それが「類似」の減価償却方法だからです。
このため、同じ定率法で複数の減価償却方法が混在していても、それぞれ「類似」であるため、それぞれがIFRSの簿価と「概ね同等」ということも可能だと思います。

 原則主義であるIFRSを原理主義的に適用する必要はないでしょう。
 税務上の減価償却を基礎としつつ、乖離しそうな場合にIFRSの減価償却を行うというスタンスもありうると思います。
 但し、経済的便益の費消パターンを見積もるのが大原則なので、税務上の方法が大原則に合っているかどうかについては慎重に検討する必要があります。
 固定資産の処理は長期にわたり影響を及ぼしますので、しっかりと理屈付けをして慎重に決定すべき項目です。


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