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簡便法による退職給付会計(中小企業会計指針)

作成日:平成25年9月11日


簡便法による退職給付会計の概要

 大企業が行っている退職給付会計は、数理計算などの専門家であるアクチュアリーによる計算が必要になるほど複雑なものです。

 しかし、従業員数が300人未満の会社などでは、簡便法により、簡単に退職給付会計を適用することができます。

 簡便法にも複数の方法がありますが、退職一時金制度を導入している小規模企業の場合に最も一般的なのは、「自己都合要支給額」を退職給付債務とする方法です。
 「自己都合要支給額」は、従業員が自己都合で退職した場合の退職一時金の額(退職金規程による)です。

 そして、退職給付債務から年金資産を控除した額が、退職給付の係る負債(退職給付引当金)として貸借対照表に計上されることになります。

 ここでは、退職一時金制度を導入している小規模企業が、簡便法により「期末自己都合要支給額」を退職給付債務とする例を記載します。


簡便法による退職給付引当金の計算

 平成25年3月末及び平成26年3月末において、自己都合要支給額が以下の通りであったとします。
 年金資産はないものと仮定します。

平成25年3月末(単位:千円)
平成26年3月末(単位:千円)
Aさん
12,000
13,000
Bさん
10,000
10,800
Cさん
8,000
8,500
Dさん
5,000
5,300
Eさん
2,000
2,200
合計
37,000
39,800


 この場合、平成26年3月期末の退職給付引当金の額は39,800千円となります。
 また、期首から2,800千円だけ退職給付引当金が増加していますので、損益計算書に退職給付費用が2,800千円計上されることになります。


退職給付会計適用初年度の特例

 このように、簡便法による退職給付引当金の計算自体は難しくはありませんが、小規模企業にとって急に退職給付引当金を計上するのは影響が甚大です。
 このため、中小企業の会計に関する指針(平成24年版)では、以下の特則を設けています。

(第57項)
 退職金規程があるが退職給付引当金を計上していない場合、一時に処理することは、財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性が高い。
 そのため、本指針適用に伴い新たな会計処理の採用により生じる影響額(適用時差異)は、通常の会計処理とは区分して、本指針適用後、10年以内の一定の年数又は従業員の平均残存勤務年数のいずれか短い年数にわたり定額法により費用処理することができる。
 この場合には未償却の適用時差異の金額を注記する。


 上記の例が適用初年度だった場合、この特則によれば、平成26年3月末における退職給付引当金39,800千円を10年間にわたって少しずつ計上してゆくことができます。


退職金規程との関係

 また、退職給付引当金の計上にあたっては、通常、退職金規程が必要になります。
 合理的な計算根拠がなければ、引当金の計上は認められないためです。
 この点について、中小企業の会計に関する指針(平成24年版)では、以下のように記載されています。

(第56項)
 退職金規程がなくかつ退職金等の支払に関する合意も存在しない場合には、退職給付債務を計上することはできない。
 ただし、退職金の支給実績があり、将来においても支給する見込みが高く、かつ、その金額が合理的に見積ることができる場合には、重要性がない場合を除き、退職給付引当金を計上する必要がある。


 中小企業会計指針では、合理的に見積りができる場合には退職給付引当金の計上を求めています。
 そして実務上では、やはり退職金規程を整備することが望ましいといえます。


中小企業退職金共済制度(中退共)の会計処理

 退職給付会計に関する項目として良く出てくるのが、中小企業退職金共済制度(中退共)や確定拠出年金制度です。
 これらの、拠出以後に追加的な負担が生じない外部拠出型の制度では、その掛金を費用処理することになります。
 なお、退職一時金の一部が中退共制度などから支給される制度にしている場合、期末の自己支給要支給額から中退共制度などにより給付される額を控除した額が退職給付債務となることに注意が必要です。


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