社長!会社の手元現金が100万円になってます!?
税理士や経理から、こんなことを言われたことはありませんか。
勿論、社長の手元には、100万円もの現金はありません。
100万円も現金があるのは、帳簿上だけの話です。
それでは、なぜこのような現象が発生してしまうのでしょうか。
現金経理の仕組みと領収書の重要性について、考えてみましょう。
現金経理の仕組み
まず、社長が会社の通帳から現金を引き出しすると、次のような仕訳が計上されます。
仕訳の借方は、帳簿上、資産の増加と認識されます。
会社の現金が100,000円増加し、預金が100,000円減少したという仕訳です。
この時、帳簿上の現金は、100,000円と表示されます。
この時点では、社長が引き出したばかりの手元現金と一致していますね。
次に、社長は取引先とゴルフに行きました。
そして、ゴルフ場に15,000円を支払い、領収書をもらいました。
もらった領収書は、勿論、経理に渡します。
すると、経理は次のような仕訳を計上します。
仕訳の貸方は、帳簿上、資産の減少と認識されます。
交際費15,000円を支払いしたため、会社の現金が15,000円減少したという仕訳です。
この時、帳簿上の現金は、借方計上100,000円-貸方計上15,000円=残高85,000円となります。
この時点でも、社長の手元現金と帳簿の残高は、一致していますね。
領収書のゆくえ
そして社長はゴルフの後、取引先と夜の街に繰り出します。
まずは一次会。
ここでは、割り勘で10,000円を支払しました。一次会では、10,000円の領収書をしっかりもらいます。
中小企業の社長にとって、領収書は命の次に大切です。
さて、問題はここからです。
二次会は取引先の社長が行きつけのキャバクラです。
その日は盛り上がってしまい、3時間が経過、3名246,000円のお会計となりました。
なんという高額・・・
ここで、中心的な大社長が、100,000円を支払ってくれました。
シャンパン入れてましたからね。
流石に太っ腹です。
そこで、残りの2名で73,000円ずつを支払います。
さあ、73,000円の領収書をゲットしたものの・・・
社長の会社の経理は、奥さんです。
深夜に帰宅して、キャバクラでの73,000円の領収書を渡しては、殺されてしまいます。
しかし、タクシー代1,500円もかかったため、手元の残金は、僅か500円。
社長はたまらずコンビニに駆け込み、100,000円を引き出しました。
やれやれ、タクシー代1,500円の領収書だけ、奥さんに渡しておくか。
現金経理の仕組みと領収書の重要性
一連の流れから、経理が仕訳をすると次のようになります。
この時、帳簿上の現金勘定は、いくらになるでしょうか。
帳簿上の現金は、下記のように計算されます。
残高85,000-貸方10,000-貸方1,500+借方100,000=173,500円
あれ!?社長の手元現金は、なけなしの500円+コンビニで引出した100,000円=100,500円でしたね。
見事にキャバクラ代の73,000円だけ、帳簿と実際に差異が生じてしまいました。
つまり、会社の現金で、領収書のない支払をすると、帳簿上の現金残高が増えてしまうのです。
なお、キャバクラ代の領収書を堂々と経理に提出していれば、現金残高が増えてしまうことはありません。
社長の末路
さて、こんなことを繰り返しているうちに、決算を迎えてしまいました。
月に1回73,000円の差異でも、12カ月経つと・・・帳簿と実際との差異は、100万円に膨れ上がってしまいます。
他にも、領収書のない支払や経理に渡せない領収書があったのでしょう。
そして、決算をしてみると、「社長!会社の手元現金が100万円になってます!?」の声。
この状況、奥さん&税務署からの往復ビンタに至ります。
税務署が来ると、このような現金残高は大きな問題になるからです。
社長貸付金として、受取利息を計上しないといけないのではないですか?
これは実質的に役員賞与なのではないですか?
私的な支払を経費にしていませんか?
こんな時に社長の味方をしてくれるのは、税理士だけです。
ともあれ、会社の現金を引き出したら、必ず対応する領収書が必要です。
現金経理の仕組みがわかると、領収書の重要性も今まで以上にわかりますね。